ガンプラは1980年から45年目を迎えた世界中で支持される日本発症のアート文化です。多くの年代層・国で長きに渡り支持され続けている理由を考察します。
ガンプラは1980年7月に発売が開始されてから45年目を迎えましたが、10歳以下から50歳以上、世界各国でファンが拡大し続けています。世界各地域ではガンプラコンテストが開催され、世界大会迄開催されている日本が誇る日本発症のアート文化と言えます。私は40歳の時に、インド駐在中にたまたまガンプラを手に取り、その魅力に取りつかれ、50歳後半になった今でもガンプラ熱・ガンダム熱は増すばかりです。この記事では、何故これほどまでに長きに渡り、世界中で幅広い年代層に支持し続けているのか?その理由を詳しく考察しましたので、是非、ガンプラの魅力について理解を深めていただければ幸いです。
ガンプラが45年続いている理由
ガンプラとは、テレビアニメ「機動戦士ガンダム」で登場する人型戦闘兵器(通称:モビールスーツ)のプラモデルのことで、その商品群の総称としてガンプラと呼ばれています。ガンプラは1980年から発売開始され、45年たった今でも幅広いファン層を抱え、その市場は日本だけでなく世界に広がっております。
2024年3月期のガンダムシリーズ売上高は1,457億円に達しています。ガンプラの累計販売個数は2023年3月末時点で7億6,111万個に達している超ロングセラーの商品群であり、最近では出荷個数に占める海外比率は5割に及んでいます。また、45年の間、常に新たな新製品・技術的進化を遂げている一方、最新のものだけが販売されているのではなく、ガンプラ初期のモデルも再販し続け、人気商品は今では入手が困難です。ガンプラが超ロングセラーとなっている理由を考察しますと、以下の6つが上げられます。
① 常に進化を続ける技術力
② 年齢・レベルに合わせた商品群
③ 無限の自由度と技術に合わせた製作テクニックの奥深さ
④ コンテンツとなるガンダムという世界観
⑤ 全世界に広がるマーケット
⑥ 巧みな販売戦略
参考:バンダイナムコ「45周年を迎え、進化を続けるガンダムシリーズ」
バンダイナムコ「ファンとともに進化し続けるガンプラ
① 常に進化を続ける技術力
ガンプラは発売当初はタミヤやハセガワに代表されるプラモデルの一つとして販売が開始されましたが、長い年月の間に次々に深化と進化を遂げ、今も継続しています。グレードの開発に加え、同じグレードの中でも、関節構造の進化があります。製作して驚くのは、その精度(技術力)の高さと設計力です。一般的なプラモデルは、重ね合わせて接着剤を使って接着させます。しかし、ガンプラはスナップフィットと呼ばれる方法でパーツを固着(密着)させます。イメージとしてはLEGOのようなものです。2つのパーツをダボ穴(凹)とダボ(凸)をはめ込むことで固着させます。このかみ合わせ精度に寸分の狂いもなく、キツ過ぎず、緩過ぎず、正確にピタッと固着することに驚かされるでしょう。
更には、ガンプラは人型戦闘兵器ですので、体の間接が動き、完成後に自分の好きなポーズで飾ることが出来ます。複雑な関節設計により、自由に動くだけでなく、その姿勢で安定します。また劇中で、飛行形態に変形する機体もありますが、ガンプラではこの飛行形態への変形も行うことが出来るモデルもあります。その設計技術は、もうプラモデルなのか一種の工芸品なのか分からなくなるほどです。
プラモデルの製造工程は、簡単に言えば、液状に溶かしたプラスチック類を金型に流入し整形します。 プラモデルの様に複雑で細かな形状のものは、液状のプラスチック類が十分に充填できず不良品となる難しさがありまます。また同じ金型で、複数の色のプラスチック類を流し込んで、色分けしているものもあります。これはバンダイが世界に誇る高い技術力を有している所以であり、ガンプラは今でも日本の静岡工場(バンダイホビーセンター)でのみ製造され続けています。
参考:【ガンプラ誕生の裏側】バンダイホビーセンターに潜入
② 年齢・レベルに合わせた商品群
ガンプラは当初1/144モデル、1/100モデルというグループ分けをしていましたが、1990年から製作の難易度に合わせたグレードと呼ばれる共通グループ(カテゴリー)を作りました。詳しくは別の記事でご紹介しますが、いくつか代表的なものを簡単に紹介しますと以下の通りです。
参考:バンダイホビーサイト
ガンプラの商品群を分かり易く分類・統一したことで、様々な年代・レベルの人が自分に適したグレードを選びやすくなっただけでなく、いつかこのグレードに挑戦してみたいという目標を抱くことが出来るようになっています。

③ 無限の自由度と技術に合わせた製作テクニックの奥深さ
ガンプラはパーツを切り出して、組立説明書通りに組み立てれば、誰でも簡単に作ることが出来ます。MGやPGはパーツの色分けが秀逸に行われているので、そのまま組み上げるだけでも十分に完成度の高い作品になります。加えて、多くの人たちがガンプランの虜になっている理由は、更に手を加えることで、より完成度の高いオリジナル作品に仕上げることが出来るからです。ガンプラは製作の自由度が無限大に広がっており、こうしなければダメというものはありません。オリジナルをベースに、製作者がイメージを膨らませ、時間をかけて自分だけの作品に作り上げていくことが出来ます。
ガンプラを製作する上で行われているテクニックの代表的なものを、下記の一覧表に整理・分類してみました。
夫々の加工内容の詳細については、別の記事で紹介いたしますが、夫々の加工についてもいろいろなテクニックがあります。他のジャンルのプラモデルに比べ、圧倒的に自由度が広く、自分なりに自由に作り込むことが出来るところが、ガンプラの奥深さと言えます。
④ コンテンツとなるガンダムという世界観
ガンプラはテレビアニメ「機動戦士ガンダム」をモチーフとしたプラモデルですが、機動戦士ガンダムの世界観は、決して子供向けのヒーロー漫画ではありません。実在する現代社会の将来像と重ね合わせることが出来るような設定(ひょっとしたら近い将来本当にそうなるかもと思ってしまう設定)を元にした宇宙に住む人間と地球に住む人間同士が戦う戦争ドラマであり、「なぜ人は戦わなければならないのか」を問う反戦ドラマでもあります。その世界観に魅了された多くのクリエーターが、数多くの続編やその世界観を裏付けるサイドストーリー、同じ世界観を持つ異なる時間軸の別ストーリーを、TVアニメ・映画・漫画・小説・解説資料本・ゲームといった複数のデバイスで展開しており、単一アニメの枠を超えた「ガンダム」という世界観を作り上げています。また、非常に著名な作家である福井晴敏氏や今野敏氏も、その続編やサイドストーリーの小説を手掛けています。更に、ガンダムの世界で登場する多くのモビールスーツの開発系統図などもあり、物語の重厚さもさることながら、全てにおいて非常に深く細かく作り込まれており、多くの方がこの世界観に引き込まれています。
⑤ 全世界に広がるマーケット
ガンプラ人気は、世界各国に広がっており、バンダイスピリッツが運営する直営ガンプラ専門店(Gundam Base)は、日本以外に、韓国・台湾・中国・タイに展開しており、ここでしか購入できない限定商品などもあります。また、Premium BandaiというOnlineストアは、日本・香港・マカオ・マレーシア・フィリピン・タイ・シンガポール・米国・EUに展開しており、世界中でガンプラを購入することが出来ます。2020年5月以降、海外販売(売上比率)は50%を超えています。
更に、ガンプラを販売するだけではなく、世界各地域でガンプラ製作の技術・完成度・独創性などを競う大会も開催されています。これは、「Gunpla Builders World Cup (GBWC)」 と呼ばれるBandai Spirits が主催する公式世界大会であり、世界の各地域・エリアで予選行い、ガンプラ製作の世界チャンピオンを決めるというものです。
直近では、2024年11月よりNETFLIXにて、フルCGで描かれたサイドストーリー「機動戦士ガンダム復讐のレクイエム」が全世界で放送開始となりました。
⑥ 巧みな販売戦略
上記以外にもガンダムファン・ガンプラファンが常に拡大している理由として、バンダイが展開するアニメとガンプラとゲームを融合させた巧みな販売戦略が見られます。ゲームの世界では、自分の好きなモビールスーツを操って戦わせる「ガンダムブレーカー」というゲームがありますが、自由に機体性能(武器や防具やパワー等)を強化するだけでなく、まるでプラモデルの部品を付け替えるように、他の機体の部品を移植できるようになっています。これがガンプラの世界でも実際に流行り、「ミキシング」という呼び名で広まっています。
2013年より放映されたTVアニメ「ガンダムビルドファイターズ」は、ガンプラを自由に動かすことが出来るプラフスキ-粒子が展開されたフィールドで、自分が作ったガンプラを遠隔操作で操り、戦わせるガンプラバトルがメインのストーリーとなっています。ガンダムの世界観の延長というより、ガンプラをモチーフにしている異色の物語ですが、現実の世界でも、自分が実際に作ったガンプラをスキャンして、ネット上の仮想空間で使用することが出来る「Road to Gundam Battle」が展開され大会なども開催されています。
また、ガンダムベースには、実物大(20~25m)のガンダムシリーズの主人公機の立像が展示されていたり、2020年12月~2024年3月末まで、横浜の「Gundam Factory Yokohama」にて実物大の動くガンダムが展示されるなど、既存ファンはもちろんガンダムを知らない人にも想像力を掻き立てるような仕掛けにも力を入れています。アニメ・ゲーム・ガンプラ・実物展示といったコンテンツの融合により認知度・ファン増やすという戦略を取っているようです。
ガンプラは大人も趣味として楽しめる日本発症のアート文化
ガンプラファンは年々確実に増加してきましたが、コロナ禍で外出が制限される様になった頃に、ガンプラ人気が急激に拡大したと言われております。
参考:経済産業省:おうち時間は楽しくプラモデル製作
ガンプラが単に子供のおもちゃで組立説明書の通り組み上げて終わりというだけに留まらず、その製作技術や世界観を表現するアートであり、今やそのアートは世界中に広がっているこということがご理解頂けたと思います。私が「ガンプラは日本発祥のアート文化の一つ」と言っているのは理由はここにあります。また同時に、ガンプラ製作に便利で高性能な工具も、いろいろなメーカーから次々に新しいものが多く販売されております。そうした工具・道具もガンプラ同様、世界各国に輸出されています。
まとめ
ここまでお読みいただきありがとうございました。ガンプラが45年も継続し、幅広い年齢層・世界各国で成長を続ける理由について考察し、ご説明いたしました。
- 常に進化を続ける技術力
- 年齢・レベルに合わせた商品群
- 無限の自由度と技術に合わせた製作テクニックの奥深さ
- コンテンツとなるガンダムという世界観
- 全世界に広がるマーケット
- 巧みな販売戦略
ガンプラが長い期間、多くの国で幅広い年代層に受け入れられている理由は、いろいろな要素が絡みあり、作品の良さ・バンダイの旨さ・技術陣の進化に加え、私たちファンの挑戦がうまくかみ合わさって今も続いているのだと思いますし、まだまだ続くと思います。
2025年1月時点の日本では、多くのガンプラが品薄状態であり、再販されても直ぐに完売してしまうほどであり、好みのガンプラを入手するのが困難な状態が続いております。未開封品などが、高額で取引されたりもしていますが、1日も早くこの状況が改善されることをバンダイさんに強くお願いするしかありません。
是非、「ガンプラ=子供のおもちゃ」という固定概念を払拭頂き、ガンプラの世界を覗いていただけると幸いです。